ここはディスト様萌について吐露する場である。 管理人の趣味による非公式二次創作サイトです。 TALES OF THE ABYSSのジェイディス他、主にディスト関連の小説を書き綴るブログです。 公式の企業その他製造元とは全く関係ありません。
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ブログにて、突発的に書き出した話。

まだ完結には至りませんが、のんびりお付き合い頂ければ、と思います。


 


「疎外感?」


皇帝と、罪人と、軍人。

今や立場も大きく分かれてしまった幼馴染。
しかしその存在の大きさも大切さも互いに変わることはなく成長した三人。

それは三人にとっては珍しい光景ではなかったとはいえ、
三人とも立場が立場故に久しく開かれていなかったおよそ4ヶ月ぶりのプライベートお茶会での事であった。

小さなテーブルを囲んでの独身三十路男達の集まりは傍から見たら寒い絵図だろうが、
その行動たるや年齢に見合わず、まるで少年のような賑やかで騒がしいものだ。
その騒ぎの元凶達を見て、ジェイドは溜息をついた。

「なーなーサフィールー」

「キィィィィィイィ!!ほんっと!うっとおしい人ですね!汚いです!私に触れないで下さいっ!!」

「いやいや、汚くねーよ!ちゃんと手ぇ洗ってるぞ!」

「そういう意味ではありませんっ!!」

迫り来るピオニーの手を必至に避けながらキィキィ鳴いているサフールは完全に子供のそれだ。

(はぁ、この人たちはいったいいつになったら大人になるんでしょうね・・・)

ピオニーは例の如くサフィールに毛嫌いされているにも関わらず、サフィールが大好きだ。
中でもピオニーはその白い絹の様な髪を一等気に入っていたので、ついつい触ってはサフィールを怒らせている。
しかし、それも表層的でしかない事を、ピオニーもジェイドも分かっていた。
サフィールの場合潔癖のきらいがあるため、本当に嫌いな相手であれば触らせもしないのだから、本音では好いているのだろう。

だが、それとこれとは別だとジェイドは思う。だって、これはあまりにも五月蠅い。
もういい年だ。
少しくらいこの二人にも落ち着きってやつがあっても良いのではないかとその戯れを見ながら思わずにはいられない。

「・・・はぁ。」

そして、また一つジェイドは溜息をついて、
かすかに自分の胸を過ぎった靄の掛かった感情を殺すように冷めかけの紅茶を飲み込んだ。






数ヶ月後。

ジェイドが通常の執務中にサフィールに出会うことは実はかなり少ない。

サフィールは時間さえあれば会いに来ようとしているようだが、今のように仕事が立て込んでしまうとそれすら出来ないのが現状だ。

つまり、こうして廊下でばったり会うことは本当に少ない確立だったと言える。
そしてまた、サフィールが落ち込んでいた、と言うのも中々珍しい状態であった。

だから、反対側の廊下からトボトボと歩いてくるサフィールに、ジェイドから声をかけたのはそんな珍しさからだったのだろう。

「・・・サフィール?お久しぶりですね。」

すぅっとゆっくり顔を上げたサフィールは少しやつれた顔をし、緩慢な動作で口を開いた。

「・・・ジェイド・・・お久しぶりです。」

「どうしたんです、騒がしくないなんて貴方らしくない。」

「どうした、と言うほどの事ではありませんよ。・・・いくら私と言えど年には勝てないと言うことです」

「おやおや、貴方からそんな言葉がもれるなんて明日は雪ですかねー。」

「・・・そうかもしれません。雪が降ればここも少しは過ごし易くなりますね。」

少しからかってみるが、中々思ったような反応は返ってこない。

「・・・」

「・・・」

これは本当にいよいよおかしいとジェイドは感じた。こんな風に弱って嫌味の一つも返さないサフィールなど見たこともない。本当に珍しい日だった。
二人の間を生暖かい夏の風が吹き抜ける。

「体調が、優れないのですか?」

長い手袋を外し、その手でサフィールの前髪をかきあげ、額に触れる。
一瞬、ビクっとしたものの少し冷たい手が気持ちいいのか、安心したような顔で大人しくその手を受け入れている。

「・・・貴方は、」

「?」

「貴方は私なら文句は言わないのですね。」

それはあのお茶会の時、ピオニーがサフィールの髪を撫でまくっていた時の事を思い出しての発言だった。

「・・・っ!!」

弾けるように目を見開いたサフィールは驚愕・・・むしろ恐怖に近いような表情を浮かべる。

「ぁ・・・ぁ・・わ、わた、し・・・」

意味を成さない羅列を紡ぎ、とても耐えられないというように背を向け走り去った。
残されたジェイドはその背を見送ると、未だサフィールの温もりが残る自らの手を見つめる。

「あれは、なんだったんでしょうか。」

ポツリと呟く。
本当に不思議な日だ。特に何をしたわけでもないのにサフィールが自分から逃げるなんて、とジェイドは呆然とした。

そのまま歩き出そうとすると背後から笑い声が聞こえた。

「ははは。サフィールに逃げられたなぁ、ジェイド!」

「陛下。こんなところで何をなさっているのですか?」

ジェイドの後ろから現れたピオニーは鷹揚に笑ってジェイドの肩に腕を回した。

「なぁ、お前サフィールがなんで逃げたか・・・・分かるか?」

「陛下、私の話聞こえましたか?」

「なぁ、いいから応えろよ。」

「はぁ、貴方が私の話を聞かないのは今に始まったことではありませんでしたね。」

「その分お前も、俺の話を聞かないけどな!・・・まぁ、そんな事は今更だ。だけど、今更なんて言葉じゃ流せないこともある。」

「・・サフィールの事、ですか?でも先ほど私は特に何もしていませんよ。」

「いいや、違う。お前はズルイよ。」

ピオニーは腕を解くとゆっくりとサフィールの消えた方向に歩き出した。

「ちょっと、待ってください。それはどういう・・・」

歩みを止めたピオニーは振り返ることなく告げる。

「お前は、今、サフィールの気持ちが分からないだろう?無造作にサフィールに触れて、何の配慮もなくあんな言葉を投げかけた。それってズルイじゃないか。」

「・・・どういうことなんですか?私にはさっぱり・・・」

「いや。そんなことはない。お前、本当は分かっているんだろう?なのに、またサフィールを傷つけた。

あの時の事、お前は今でも忘れられないくらい心に引乱されていたもんなぁ・・・。それって嫉妬だろ?」

「私がそんな事に嫉妬すると?・・・馬鹿らしい、大体誰にどんな理由で嫉妬すると言うのですか?」

「いいや、お前はいつでも嫉妬していたよ。俺に。」

「サフィールに触れることが?羨ましいとでも?」

「本当はお前もアイツに触れたいと思ってたさ。
現に今、何に対して嫉妬しているか言わなかったのに、お前は正確に見抜いた。あの時が茶会を指してる事も。嫉妬の対象が俺がサフィールに触れた事だって言う事も。」

「それは、貴方が『お前はいつでも嫉妬していたよ。俺に。』と言うから・・・」

「俺はお前が何に嫉妬してるかまでは言ってない。
地位かもしれなし、権力、顔、なんでも嫉妬の対象にはなるだろう?なのに、お前は自分で言った。自分が嫉妬したのは『サフィールに触れたこと』だと。」

「・・・まぁ、いいでしょう。仮にアイツに触れる事に嫉妬したとして、私は私の意志でいつでもあいつに触れられる。嫉妬する要素がありませんよ。陛下。」

自分の知らない感情に突き動かされているような、居た堪れないような、

それでいて、何もかもが分かっているかのような、意味の分からない衝動に、動揺した。


「・・・でも、実際は触れなかった。お前はプライドが邪魔して触れられなかったんだ。」

「プライド?そんなもの・・・」

「触れようとしたあいつすら否定し続けた!」

「ちょっと待ってください、陛下・・・」

「あいつはただ、触れるだけでよかったのに、それ以上なんてこれっぽちも求めていなかったじゃないか!!」

「どうしたんです?!落ち着いてください!」

片肩を掴みこちらを振り向かせると、ピオニーの肩を揺する。

「なのに、お前はそんな思いさえ!ああそうだ、そんなささやかな願いのひとつすら砕いてきた!」

覗き込んだピオニーの目はあの蒼穹の青なんかじゃない、暗い色を湛えていた。

「ッどうしたんですか!?」

段々と言葉に熱が篭り、こちらの言葉すら聞こえていないような状態に一種の恐怖が湧き上がってくる。

「アイツの苦しみがお前にわかるか!?どうして、あんな事許せるんだよ!なんであんな風になってまで・・・!」

「ピオニー!」

恐ろしさから逃れるように声を張り上げて名を呼んだ。

「あいつは・・・あいつは・・・!」

「ピオニー!それは何の、何の話ですか!?」

何を話しているのか、混乱する。いったいピオニーはいつの事を話している?何の事を言っているのだろう?話から察するにそれはここ最近、少なくてもあのお茶会よりはずっと前の事が原因のように思う。

「あ・・・、いや、もうこれ以上はやめよう。」

唐突に正気に戻ったピオニーの言葉に安心すると同時に、今度は逆にピオニーが話そうとしていた事が気になった。

「陛下?」

「・・・すまない、俺も疲れているようだ。悪かったな。」

「・・・いいえ、構いません・・・」

「じゃあ、俺も行くな。」

「待ってください!さっきの話・・・」

「お前には、もう関係ないだろう?過去は戻らない。」

くるりと、今度こそ背を向けるとピオニーは歩き出した。

過去は確かに戻らないし、何よりその諦めの漂う雰囲気に何を言えたのだろう。
さしものジェイドも、その向けられた背を無言のまま見送ることしか出来なかった。

「・・・」

ジェイドに残されたのはなんとも消化しきれないもやの掛かった疑問と、サフィールとピオニーの二人だけが知るソレに対する執着だけだった。

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